■事件の概要
2009年2月5日午後7時ころ、京都市伏見区に住むKさんは、近所のホームセンターに買い物に行き、1号館で買い物をし、2号館にも立ち寄って埋め込み式24時間タイムスイッチ(4450円)を手にとって見たところ、自宅のスイッチボックスと合わないものだったので、陳列棚に戻して帰宅しました。

ところが1週間後、突然警察が自宅に来て、タイムスイッチを万引きしたとの嫌疑で令状逮捕され、家宅捜索もされました。

Kさんは、取調べで犯行を否認。検察は、「挙動不審の男がタイムスイッチを手にしているところを目撃……その男が万引きするところを現認した」との警備員の供述調書や「棚卸などで探してみたが、タイムスイッチは見つからなかった」との従業員の供述などを根拠に起訴。

■客観証拠なし
裁判で弁護団は、防犯ビデオなどからもKさんがタイムスイッチを持って店を出たことを示す客観的証拠は何一つないこと、逮捕直後の自宅や倉庫の捜索でもタイムスイッチは発見されなかったと無罪を主張しました。検察が有力な根拠とした警備員の「目撃証言」は「(Kさんの)手元ばかりをみていたのでどこか記憶にないが、……ショルダーバッグに入れる素振りをした」、「Kさんを見失って、見つけた時には、Kさんはタイムスイッチを手に持っていなかったから盗(と)ったに違いないと思った」と極めて曖昧な証言に変遷しました。警備員は、店を出たKさんの後を40秒ほど追い、車に乗り込もうとするところを「ちょっとすいません」と声をかけたが無視されたと証言しました。Kさんは、警備員の声掛けには全く気付かなかったと述べまし た。

■懲役1年6月最高裁で確定
一審の京都地裁は、Kさんは警備員の声掛けに気づいていた、だから、タイムスイッチを処分したと、証拠もなく認定し、懲役1年6月の有罪判決を出しました。
Kさんは控訴し、大阪高裁に係属中の2010年6月、ホームセンターの従業員が箱に入っていない裸のタイムスイッチを発見したと警察に届け出ました。そのタイムスイッチは、万引きされたとされるものと同種同型のもので、しかも従業員によると年に1台程度しか売れない商品です。Kさんによって「万引きされた」とされたタイムスイッチである可能性が極めて高いのです。弁護団は、当然、Kさんの「無実を示す証拠」として裁判で調べるよう求めましたが、大阪高裁は、その請求をすべて却下したうえで、タイムスイッチの発見が無実を証明しているとの主張も「荒唐無稽な主張にすぎない」と控訴を棄却。最高裁もこれを追認判決が確定。Kさんは、京都刑務所で服役し出所しました。
Kさんは、1995年から京都市内で自動車修理販売業を営み、仕事に熱心に打ち込み、客も順調にふえ経営も安定してきたときの事件でした。家族もいて、万引きをする動機は全くありません。Kさんは現在、再審請求の準備中です。

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