国民救援会は、言論弾圧事件や冤罪事件、各地でたたかわれている国や企業などによる人権侵害とたたかう裁判など、100件以上の事件を支援しています(2023年10月時点)。主な支援事件を紹介します。

言論弾圧・権力犯罪・責任追及事件

■ 北海道・道警ヤジ強制排除裁判

原告 大杉雅栄ら2人

2019年の参院選で札幌の街頭演説に来た安倍首相の演説にヤジをとばした市民が強制排除。2人の市民が北海道警察の違法行為、人権侵害の責任を問うて札幌地裁に提訴。22年3月、表現の自由を侵害したとして原告勝訴判決。23年6月、札幌高裁は原告1人の請求を棄却。最高裁に上告。

■ 群馬・違法な取調べ国賠請求事件

原告 A

でっち上げで逮捕され、DNA鑑定や尿検査までおこなわれた人権侵害に、Aさんが前橋地裁に国賠裁判を提訴。23年3月、群馬県と国に対して損害賠償の支払いを命ずる勝利判決。県が控訴、原告が付帯控訴。現在、東京高裁。

■ 東京・DNA型データ抹消請求等事件

原告 臼田眞久(まさひさ)

窃盗の疑いをかけられた臼田さんのDNA型データについて、疑いが晴れたにもかかわらず、警視庁・警察庁のDNA型データベースから抹消されず、そのデータ抹消と損害賠償を都と国に求め、21年に東京地裁に提訴。

■ 愛知・白龍町マンション暴行でっち上げ事件国賠訴訟

原告 奥田恭正(やすまさ)

16年に高層マンション建設反対運動のリーダー・奥田さんが、現場監督に暴行したとして逮捕・起訴。18年、名古屋地裁で無罪確定。警察と業者が事件を計画したとして名古屋地裁に提訴。写真、指紋、DNAなど個人情報の抹消を求める。22年1月、DNAデータなどの抹消を命じる判決。現在、名古屋高裁。

■ 岐阜・大垣警察市民監視国賠・個人情報抹消請求事件

原告 三輪唯夫、松島勢至、船田伸子、近藤ゆり子

14年、風力発電施設計画の勉強会を開いた地元住民2人と平和活動家2人の個人情報が大垣警察署に収集され、中電の子会社に提供されていた事件。4人は監視等は違憲として国賠と個人情報の抹消を請求。22年2月、岐阜地裁は個人情報を提供したのは違法と4人に各55万円支払うように県に賠償命令。情報収集の違法を認めなかったので控訴。県も控訴。現在、名古屋高裁。

■ 滋賀・湖東記念病院国賠訴訟事件

原告 西山美香

病死した入院患者の死因について捜査当局が殺人事件として、当時看護助手だった西山さんに自白させ、懲役12年を科すが、20年3月に大津地裁で再審無罪(確定)。同年12月、国と県を相手取り国賠裁判を提起。大津地裁。

■ 大阪・東住吉冤罪事件・青木国賠裁判

原告 青木惠子

95年、放火殺人並びに保険金詐欺未遂事件で逮捕・起訴された青木さんは、16年に再審無罪となり、同年、誤判原因究明と責任追及のために国賠提訴。22年3月、大阪地裁は判決で、警察の違法な捜査や取調べに対しては厳しく断罪するも、国(検察)の違法性については認めず、控訴するも大阪高裁は追認。現在、最高裁。

■ 兵庫・レッドパージ国家賠償請求裁判

大橋豊

戦後、アメリカ占領軍の示唆(しさ)を受けた政府と財界により、4万人が公職と企業から追放され70年余。名誉回復と国家賠償をめざし、国会請願署名などにとりくむ。現在、映画「レッド・パージ」を制作中。

■ 岡山・倉敷民商弾圧事件

被告人 禰屋町子

14年、倉敷民主商工会事務局員の小原淳さん、須増和悦さんが税理士法違反で、禰屋さんが税理士法と法人税法違反で逮捕・起訴された弾圧事件。小原さんと須増さんは18年、懲役10月・執行猶予3年の不当判決が確定し、執行猶予期間終了。禰屋さんは17年、岡山地裁で懲役2年・執行猶予4年の不当判決。広島高裁岡山支部が18年、地裁判決を破棄し差戻す判決。現在、岡山地裁で審理中。

■ 熊本・松橋(まつばせ)事件国賠訴訟

原告 宮田浩喜さんの遺族

85年に熊本県内で男性が殺害された松橋事件で殺人罪に問われ、19年に再審無罪が確定した宮田さんが、20年、熊本地裁に国と熊本県に対し損害賠償を求める国家賠償請求訴訟を提起。同年10月、宮田さんが亡くなり、遺族が訴訟を承継している。

再審・冤罪事件

■ 秋田・大仙市事件

元被告人 畠山博

06年、道の駅の駐車場の車中で、交際中の女性の息子(4歳)を暴行し女性に殺害を指示したとして起訴。09年に最高裁で懲役16年が確定。再審準備中。山形刑務所。12月14日に満期出所予定。

■ 山形・明倫中裁判

元生徒7人

93年、新庄市立明倫中学校で生徒が体操用具室のマット内で死亡。生徒7人が犯人とされた。少年審判で3人の不処分が確定、3人が保護処分。遺族が起こした損害賠償訴訟は、一審で全員の関与を否定、高裁で逆転不当判決、最高裁で確定。再審準備中。

■ 宮城・仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件

元被告人 守大助

01年、准看護師の守さんが患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入したとして無期懲役が確定。12年、再審を請求、19年棄却。第2次再審準備中。千葉刑務所。

■ 栃木・今市事件

元被告人 勝又拓哉

05年、今市市(現日光市)の小学1年の女児が遺体で発見された事件で、勝又さんを別件逮捕し、殺人事件の「自白」を強要し起訴。宇都宮地裁で無期懲役、東京高裁は一審判決を破棄し改めて無期懲役。20年、最高裁は上告棄却。再審準備中。千葉刑務所。

■ 東京・三鷹事件

再審請求人 竹内景助さんの長男

49年、三鷹駅構内で無人電車が暴走し6人が死亡した三鷹事件で死刑が確定した竹内さんの長男が第2次再審請求。19年、東京高裁が不当決定。22年3月、東京高裁(異議審)が不当決定。最高裁に特別抗告申立て。

■ 東京・乳腺外科医師冤罪事件

被告人 外科医師

16年、右胸から乳腺腫瘍を摘出する手術を執刀した外科医師が、この手術の女性患者から「わいせつ行為をされた」と訴えられた。19年に東京地裁で無罪。20年、東京高裁で懲役2年の実刑判決。22年2月、最高裁で差戻し判決。東京高裁。

■ 東京・小石川事件

再審請求人 伊原康介

02年、文京区小石川のアパートで強盗殺人が発生、伊原さんが別件逮捕で「自白」。05年に無期懲役が確定。15年、東京地裁に再審請求。20年、東京地裁が請求棄却。22年4月、東京高裁が不当決定。12月、最高裁が不当決定。第2次再審準備中。千葉刑務所。

■ 長野・冤罪あずさ35号窃盗事件

元被告人 Y

05年、特急あずさ号の座席に置かれたバッグから財布を盗んだとして起訴。一審無罪、二審で懲役1年2月、最高裁で確定。13年、再審請求するも棄却が確定。第2次再審準備中。

■ 福井・福井女子中学生殺人事件

再審請求人 前川彰司

86年、女子中学生殺人事件で前川さんが起訴。一審無罪、二審逆転有罪、最高裁で懲役7年が確定。名古屋高裁金沢支部が11年に再審開始決定。13年、名古屋高裁が開始決定を取り消し、最高裁で抗告棄却。22年10月、第2次再審請求を名古屋高裁金沢支部に申立て。三者協議で2600点あると言われる証拠のうち138点の証拠が開示。

■ 静岡・袴田事件

再審請求人 袴田秀子

66年、強盗殺人・放火事件の犯人として袴田巖さんが起訴され、死刑が確定。第2次再審請求で14年、静岡地裁で再審開始と刑の執行停止の決定で袴田さんが釈放。即時抗告審で東京高裁は再審開始決定を取り消す。20年、最高裁は高裁決定を取り消し審理を差し戻す決定。東京高裁は3月13日、5点の衣類は捜査機関によって捏造(ねつぞう)された可能性が極めて高いことを認め、再審開始決定(確定)。静岡地裁で再審公判。

■ 静岡・天竜林業高校成績改ざん事件

再審請求人 北川好伸

06年に天竜林業高校の元校長・北川さんが、教え子の調査票の改ざんを指示したとして、公文書改ざん、収賄の罪で有罪判決。依頼したとされた元市長が「頼んでいない」と証言し、再審請求したが、23年3月、最高裁で請求棄却。元市長が金を渡していた時に銀行にいた証拠が見つかる。10月6日に第2次再審申立て。

■ 愛知・豊川幼児殺人事件

再審請求人 田邉雅樹

02年、幼児の誘拐、殺人事件で、田邉さんが起訴。一審無罪、二審で逆転有罪、最高裁で懲役17年が確定。16年、名古屋高裁刑事1部に再審請求。19年に請求棄却、同高裁刑事2部に異議申立て。22年8月に大分刑務所を満期出所。23年6月、請求棄却。最高裁。

■ 三重・名張毒ぶどう酒事件

再審請求人 奥西勝さんの妹・岡美代子

61年、ぶどう酒に毒物を混ぜ、5人を殺害したとして奥西勝さんが起訴。一審無罪、二審逆転死刑となり確定。05年に再審開始決定が出るも、06年取り消し決定。15年に奥西さん死亡。妹の岡さんが引き継ぎ、名古屋高裁に第10次再審請求。17年に同高裁刑事1部が請求棄却。22年に同高裁刑事2部が異議申立を棄却。現在、最高裁。

■ 三重・鈴鹿殺人事件

再審請求人 加藤映次

12年、鈴鹿市で、経営者の男性が頭部を殴打されて死亡。死亡推定時刻直前に訪れていた加藤さんが犯人とされ逮捕・起訴。懲役17年の有罪確定。22年6月に津地裁へ再審請求。千葉刑務所。

■ 滋賀・日野町事件

再審請求人 阪原弘さんの遺族

84年、日野町で起きた強盗殺人事件で、阪原弘さんが犯人とされ無期懲役が確定。再審請求するが11年に阪原さんが死亡。12年、遺族が大津地裁に再審請求、18年に再審開始決定。検察が抗告したが、23年2月、大阪高裁が棄却し、再審開始を維持。検察が抗告、最高裁。

■ 京都・タイムスイッチ事件

元被告人 車本都一(くるまもとくにかず)

09年、タイムスイッチを万引きしたとして起訴。懲役1年6月の判決が確定。服役を終え、再審準備中。

■ 京都・長生園不明金事件

元被告人 西岡廣子

99年、社会福祉法人で不明金3千万円が発覚。警察に調査を訴えた西岡さんが犯人に。刑事裁判で有罪、民事裁判でも敗訴が確定。再審準備中。

■ 兵庫・えん罪・姫路花田郵便局事件

原告 ジュリアス(仮名)

01年、郵便局で発生した2人組の強盗事件。ジュリアスさんの懲役6年が確定。満期出所後、出入国管理局から退去強制令書が発付され、法務大臣に在留特別許可を求める。22年に再審請求が最高裁で棄却され、第2次再審準備中。証拠隠し、証拠改ざんを追究する国賠裁判も大阪高裁に係属。

■ 兵庫・えん罪神戸質店事件

元被告人 緒方秀彦

05年、神戸市中央区の質店経営者が殺害された強盗殺人事件。電気通信設備工の緒方さんは質店の前で酒に酔った被害者と出会い、防犯カメラ設置の相談を受け、店内に招かれたことがあり、その際残った指紋や足跡、タバコの吸殻で疑いをかけられ逮捕・起訴。一審無罪、二審は無期懲役、最高裁で確定。再審準備中。岡山刑務所。

■ 岡山・山陽本線痴漢冤罪事件

元被告人 山本真也

06年、電車内の痴漢事件2件で、懲役6月・執行猶予3年が確定。再審準備中。

■ 高知・高知白バイ事件

元被告人 片岡晴彦

06年、右折待ちで停車中のスクールバスに、高速走行してきた白バイが衝突。バス運転手の片岡さんが業務上過失致死罪で禁錮1年4月の判決が確定。バスのスリップ痕などが捏(ねつ)造(ぞう)された疑いが強い。刑期満了後に再審請求。地裁、高裁、最高裁で請求棄却。第2次再審準備中。

■ 福岡・飯塚事件

原告 久間三千年(くまみちとし)さんの妻

92年、飯塚市内で女児2人の遺体が発見。遺留品発見現場で不審な車と人を見たという目撃証言をもとに久間さんが逮捕・起訴。99年、地裁で死刑判決、06年、最高裁で確定。再審準備中の08年死刑執行。09年、第1次再審請求、21年4月に最高裁で請求棄却。同年7月、福岡地裁に第2次再審請求。

■ 熊本・菊池事件

再審請求人 市民1205人

52年、ハンセン病患者として県に通報されたFさん(当時28歳)が村職員を殺したとして逮捕。裁判で一貫して無実を訴えたものの非公開の特別法廷で予断と偏見の下で、十分な証拠調べもしないまま死刑が確定。62年、第3次再審請求棄却の翌日に死刑執行。最高検が再審請求をしないと公言する中、公募された市民が主権者として違法な判決は放置できない(憲法的再審請求権)と20年、熊本地裁に第4次再審請求。

■ 鹿児島・大崎事件

再審請求人 原口アヤ子さんの長女・西京子

79年、殺人死体遺棄事件で原口さんら4人が起訴され、原口さんの懲役10年が確定。第3次再審請求は地裁・高裁で開始決定となったが、19年に最高裁が取り消し。20年、4次再審請求、22年6月、鹿児島地裁で棄却、23年6月、福岡高裁宮崎支部も請求棄却。最高裁へ特別抗告。

■ 米・ムミア事件

再審請求人 ムミア・アブ=ジャマール

米国の黒人ジャーナリストのムミアが人権差別政策と警察の暴力を告発。81年、白人警官殺害容疑をでっち上げられ、死刑判決。終身刑に減刑後、連邦最高裁の判例変更で裁判の一部やり直しが予定されていたが、ムミアのケースは判例変更ケースに当たらないとの連邦裁判所の裁定により、再審の動きに圧力がかかっている。長年拘禁で健康が悪化。