■事件の概要
宮城県仙台市の北陵クリニックで、入院患者の容体が急変する事態が相次いだとして、2001年1月、准看護師の守さん(当時29)が逮捕され、ウソの「自白」をさせられ、犯人とされました。
守さんは、患者の点滴に筋弛緩剤(筋肉の動きを弱める薬)を混入させたとして、殺人と殺人未遂で起訴されました。
裁判では、弁護団は1審の段階から、守さんはもちろんのこと、何者かが筋弛緩剤を患者に投与した事実は存在しない、患者の容体急変は、筋弛緩剤の注入による症状ではなく、いずれも病気や薬の副作用、救急処置の不徹底などによるものであると主張しました。また、点滴ボトルに筋弛緩剤を混入させたとする守さんの「自白」の方法では、容体の急変は起こりえないことも明らかとされました。
しかし、有罪とした仙台地裁判決は、5人の患者さんの血清や尿などから筋弛緩剤マスキュラックスの成分であるベクロニウムが検出されたとした大阪府警科学捜査研究所の鑑定(土橋鑑定)を信用できるとして、主治医が心筋梗塞による死亡と診断したものや、明らかに筋弛緩剤の薬理効果とは異なる症状であったものも、筋弛緩剤投与が患者急変原因であると断定して、殺人および殺人未遂事件と認定しました。
守さんが犯人とされたのは、作られたウソの「自白」と、守さんが正規の手術で使用された筋弛緩剤の空アンプル入りの針箱を片付けようとしただけの行為を「証拠隠滅を謀った」とすり替えられた証拠が採用されたためでした。
守さんは、一、二審で無期懲役の不当判決を受け、08年最高裁の上告棄却で確定しました。守さんは現在、千葉刑務所に服役中です。
■再審めざして
裁判で犯罪と認定する根拠とされた「土橋鑑定」が誤りであることは多くの学者の証言や意見書で明白です。また、急変症状が明らかに筋弛緩剤の薬効と異なると争われた患者の急変原因については、ミトコンドリア病(メラス)による急性脳症が原因であるとの神経内科専門医の意見書も出されており、殺人及び殺人未遂事件と認定した判決の根拠は完全に崩れています。
守さんの自白も事実と矛盾する信用性に欠けるものであり、証拠隠滅を謀ったとされる多数の空アンプルも証拠として法廷に出されたのは、四層に分けて撮られた四枚の写真の合計で19本の空アンプルがあると言うだけで、検察側は筋弛緩剤の空アンプルもそれが入っていたとする針箱も法廷に提出することを拒んでいます。証拠ねつ造さえ疑われています。
2012年2月に守さんと弁護団は、仙台地裁に対して再審を請求しました。再審請求申立書では、3つの主な新証拠から守さんが無実であること明らかにしています。
第1は、患者の血液や尿、点滴ボトルから筋弛緩剤の成分が検出されたとする、大阪府警科学捜査研究所の「土橋鑑定」への反証。
第2は、吐き気と腹痛で北陵クリニックを来院した少女の症状は、筋弛緩剤の症状ではないばかりか、筋弛緩剤の薬効と矛盾すること。
第3は、守さんが法廷で「僕はやっていない」という証言が信頼できる証言であることを論証した心理分析です。
しかし、2014年3月仙台地裁は、再審請求を棄却。18年2月、仙台高裁は即時抗告を棄却する不当決定。2019年11月13日、最高裁は特別抗告を棄却しました。
現在、第二次再審請求の準備中です。
守る会の連絡先
仙台筋弛緩剤冤罪事件・守大助さんを守る会
〒980-0022 宮城県仙台市青葉区五橋1-5-13 宮城県労連会館