■事件の概要
2001年6月19日午後3時10分過ぎ、兵庫県姫路市で模造拳銃を持った黒人2人組が花田郵便局から金を奪い日産シルビアで逃走する事件が発生。その後、路上で黒人男性を見てナイジェリア人のジュリアスさん(当時20代・仮名)が犯人ではないかと思った市民が警察に通報。ジュリアスさんが経営する事務所の倉庫から車や被害金、犯人の目出し帽などが発見され、翌日ジュリアスさんが逮捕されました。

事件の翌週に手術の予定が
しかしその翌日、ジュリアスさんの倉庫で働くオモ・デーブというナイジェリア人男性が姫路署に自首。「自分はオースティン(ナイジェリア人)と2人で金を奪ったが、2千万円を超える大金だったので急に怖くなり倉庫に隠した。ジュリアスは関係ない」と証言しました(オモは〝氏名不詳者と共謀した〟とされ、服役後、国外退去)。ところが神戸地裁姫路支部はオモの共犯はジュリアスさんだとして有罪。懲役6年が確定。

有罪判決の根拠は「被告人の関与なしに車や金を倉庫に隠せない」という認定です。しかし、向かいの工場で働く男性は、オモはいつも倉庫で作業しており、倉庫の鍵を開けるのも見たことがあると証言しています。オモも「当日、(倉庫の)扉は開いていた」と供述しています。

当日は雨で湿度が高く、目出し帽などには犯人の毛髪や唾液、汗などが付着する可能性が高いと言えますが、ジュリアスさんと一致するものは一切ありません。〝ジュリアスさんが犯人と考えなければ説明のつかない事実〟はないのです(倉庫で発見された犯人の靴は26.5センチと27センチ。ジュリアスさんの足は28センチ)。

また判決は、ジュリアスさんが路上で目撃されたとされていますが、そこはジュリアスさんの自宅や倉庫がある生活圏です。知人の黒人男性が働いて暮らしている会社と寮もあります。
ジュリアスさんの妻の祖母は法廷で、「(事件のあった)3時頃にジュリアスが家に帰ってきた。そのことは警察でも言っている」と証言。寮にいた友人も、「3時のCNNニュースのときに、ジュリアスが来た。警察の調書には4時のニュースとあるが、そんなことは言っていない」と証言しています。

ジュリアスさんは前年、事務所を設立し、事件の5日前には日本の永住許可を取得しています。また、膝を怪我して、「左膝内側半月断裂、左大腿骨内顆骨壊死」と診断され、事件の翌週には入院・手術の予定でした。こうしたハンデを負いながら、捕まれば退去強制で妻や子どもたちとも離散するリスクを冒して強盗に及んだことになりますが、判決は動機について何も説明しません。

証拠改ざんに通訳の暴行も
ところで郵便局の防犯カメラのダビング映像には、途中、画面が途切れて砂嵐状になっている個所が複数あります。この件について検察側は、「画像の原本は廃棄した」と回答しています。さらに、オースティン共犯説を裏付ける県警科学捜査研究所の毛髪鑑定が隠されていたり、オースティンの顔写真に毛髪を描き足した形跡があるなど、次々と新証拠が見付かりました。

再審の動き
ジュリアスさんは、神戸刑務所で服役し、2009年1月に出所し再審請求しました。ところが神戸地裁は、ジュリアスさんが郵便局を襲った実行犯と認定できなくても、犯人グループの一人である可能性が残る(共謀共同正犯)として再審請求を棄却しました。これは確定した有罪判決でも認定していない、検察も主張していない新たな有罪認定で、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の罪を問はれない(憲法39条)」という二重の処罰禁止原則に違反します。

その後、大阪高裁は2016年3月、地裁の再審請求棄却の決定を神戸地裁に差し戻す決定をしました。神戸地裁は差し戻し審で再び請求棄却の決定を行い、2022年3月、最高裁は再審請求を棄却する決定を行いました。
現在、第2次再審請求準備中です。

裁判所は「有罪判決が事実誤認であることを当該外国人が立証すべき」と、事実上、ジュリアスさんに無罪立証を求めています。再審が認められなければ国外退去となり、日本には戻れません。捜査されたナイジェリア人たちも、通訳と捜査員による意図的な誤訳や暴行があったと訴えています。

ジュリアスさんは、国と兵庫県に対して「無実を証明する証拠を改ざんされた」などとして国賠訴訟を提訴していました。神戸地裁は、2020年6月に、請求権は20年の時効によって消滅したと請求を退け、現在、裁判は大阪高裁で争われています。

ジュリアスさんと家族、そして日本に移住して、まじめに暮らす人々の人権を守るために、ご支援をお願いします。

守る会の連絡先/署名等
〒650ー0022 神戸市中央区元町通6ー6ー12 国民救援会兵庫県本部
FAX078(371)7376

【説明】花田郵便局強盗事件の署名について
【署名】在留特別許可を求める請願署名
【署名】国賠訴訟 控訴審(大阪高裁)