介護士の澤田智紀さん(34歳)が、老人ホームの入居者に暴行を加え「傷害致死」とされ、有罪が確定した事件です。
2019年4月4日未明、東京都品川区の有料老人ホーム「サニーライフ北品川」の入所者の男性(82歳)が緊急搬送され、亡くなりました。遺体解剖で右腹部・胸部の内臓損傷、肋骨(ろっこつ)骨折などがあり、5月22日、担当介護士をしていた澤田さんが逮捕、起訴。まったく身に覚えのない澤田さんは一貫して無実を主張しましたが、最高裁で懲役8年の判決が確定しました。
■連絡先
日本国民救援会東京都本部
113-0034 東京都文京区湯島2-4-4
03-5842-6464
救援新聞2025年7月25日号より
裁判所は事実上の「消去法」で澤田さんを犯人としました。 男性は脳梗塞の後遺症で右半身にまひがあるほか、認知症の症状がみられ、日常的にベッド(床から41センチの高さ)から這い出していました。男性の遺体からは、新しい骨折8カ所に加え、それ以前の古い骨折がみられ、すべて右側に生じていました。 有罪判決は、「これだけの傷害があれば痛くて這い出しはできなかったはず」という解剖医の証言を元に、日頃からベッドから這い出していた男性が、4度目の這い出しから戻された3日午後10時19分頃から緊急隊員が到着した翌4日午前1時51分頃までの3時間半の間に暴行があったと認定。その間、部屋に出入りしたのは、澤田さんと女性介護士の2人だけで、多くの時間滞在していて、その日澤田さんが男性の手や足を引くなどして部屋に戻したこと、また女性より体力に勝る澤田さんが暴行に及んだと認定したのです。 また、当日一緒に勤務していた女性介護士が、澤田さんと男性のいた部屋から「痛い、なにすんだ、やめろ」という男性の声が聞こえたとの供述も、有罪の根拠とされましたが、男性の部屋と女性介護士のいたヘルパーステーションは24メートル離れており、他の入所者もいるのに女性介護士以外、「やめろ」などの声を聞いていません。 さらに親族が「本人が『若い男に蹴られた』と言っていた」という供述もありますが、伝聞であり、信ぴょう性に疑問があります。 上告審からついた弁護団は澤田さんの訴えと記録を元に、事件性を前提とした一、二審の主張を見直し、「死因は事故死の可能性が考えられる」と重大な事実誤認の判決を見直すよう迫りました。 まひで骨折の痛みがにぶり 弁護団は男性の受傷時間は、有罪判決が認定した「4回の這い出し後から救急搬送されるまで」ではなく、4回の這い出し後よりも前であり、事故死の可能性が高いと主張しています。 這い出しで男性がベッドから降りる際、右半身が不自由なため、身体を強く打ちつけることや何度も這い出すことで、骨密度の低下した肋骨が比較的簡単に骨折してしまうことが考えられます。 さらに新しい骨折の他に古い骨折がありましたが、その痛みを誰も聞いていません。これは、右半身まひの影響で知覚が鈍麻していた可能性が十分考えられます。 加えて、男性が50歳の時に発症した脳梗塞などの治療のため、血液を固まりにくくする薬を長期間服用していたこと、血管は加齢とともに相当程度弱くなり、一度出血すると容易に止まらない血管になっていた可能性があります。以上から、本件は右半身まひ、骨密度の低下、痛み感覚の鈍麻した高齢男性が這い出し、転倒などをくり返し、骨折や腸の損傷で出血を招き、それがもとで亡くなった事故死の可能性が高く、死因は暴行によるものではなく、事件は冤罪だといえます。 なお、施設では、這い出しをくり返す亡くなった男性(体重70kg)を職員が1人で抱き上げてベッドに戻すのは難しく、やむを得ず足あるいは腕を引きずって移動させることがありました。 医療、介護現場で、高齢入所者の急変が密室の中で起きたことから、当直であった職員が犯罪者とされてしまった事件です。澤田さんは、帯広刑務所釧路刑務支所に服役して再審を準備しながら支援を訴えています。 〈激励先〉〒085―0833 北海道釧路市宮本2―2―5 澤田智紀様 介護職に誇り持ち 澤田智紀(ともき)さん 今まで多くのご利用者様やご家族様とかかわり、いただいた沢山の「ありがとう」は私が介護をやってきた誇りです。 介護職という仕事は大変ですが、とってもやりがいあり人生の大先輩であるご利用者様の生きてきたエピソードをご本人様からご享受してそんな方を支えられる幸せは介護職だから得られる仕事です。…これからもこのサポートの仕事がしたいです。ご支援よろしくお願いします。(支援者にあてた手紙より)
。
現在準備中