2008年10月25日号
 
 
  最高裁裁判官国民審査
不適任な裁判官をやめさせよう

 衆議院議員総選挙と同時に、最高裁判所裁判官の国民審査が行われます。国民の直接投票で「不信任」票が過半数となった裁判官をやめさせる(罷免)制度です。「憲法を守らない裁判官に×印(不信任)を!」「不適任な裁判官をやめさせよう!」との宣伝を大いにすすめましょう。本号では、1面で国民審査の意義を考え、2面で、今回の審査対象となる裁判官の紹介と投票方法、国民審査に関する運動のすすめ方についてまとめました。どうぞご活用ください。

 最高裁が行う判断は、国民のくらしや人権、平和、民主主義の問題に大きく影響を与えます。たとえば、国のつくった悪法を、最高裁が「憲法に違反する」とすれば、法律の改正が求められます。
 最高裁は、国会のつくった法律や政府・自治体の処分が憲法に違反していないかどうかを最終的に判断する権限を持っています(憲法81条)。最高裁が、「憲法の番人」「人権の砦」といわれるのも、このように大切な役割を担っているからです。
 その最高裁が役割をきちんと果たしているかどうかを、国民が審査し、不適任な裁判官をやめさせる制度が、国民審査です(憲法79条)。
 ちなみに、戦前の明治憲法下では、「天皇」の名において裁判が行われていたので、「臣民」であった国民が裁判官を審査するなどということは考えられませんでした。
役割果たさず
 それでは、最高裁は「憲法の番人」としての役割を果たしているのでしょうか。
 自衛隊のイラク派遣を憲法違反とした判決(名古屋高裁)や、冤罪布川事件の再審開始決定(東京高裁)など、当事者・弁護団のたたかいと大衆的裁判闘争によって、良心的な判断が出される裁判もみられます。
 しかし、多くの裁判で、国や企業側に有利な、偏った判断が行われています。人権侵害をされた人たちの声は聞き入れられず、冤罪もあとを絶ちません。
 とくに最高裁は、自衛隊問題など平和に関する憲法判断を避け、選挙・言論活動の自由といった「表現の自由」については弾圧を容認しています。国民救援会の支援事件でも多くの不当判決・決定が出されています(別表)。加えて、下級審(一、二審)が出した人権救済の判決を覆すなど、「憲法の番人」としての役割を果たしていません。
最高裁の統制
 裁判所がその役割を果たせない背景に、最高裁による裁判官の統制があります。全国の裁判官の人事権を握る最高裁は、憲法擁護を掲げる青年法律家協会に参加する裁判官を攻撃したり、戸別訪問を禁止する公選法は憲法違反とした裁判官を差別してきました。その結果、「良心に従い独立」して職権を行う(憲法76条)べき裁判官が、最高裁に従うひらめ裁判官≠ノなってしまうのです。
大いに宣伝を
 最高裁裁判官は内閣が任命します。そのため、時の政権党の意向が強く反映する恐れがあります。それだけに、最高裁が本来の役割を果たすために、不当な判決を出し、憲法を守らない裁判官を、国民審査でやめさせることが必要です。
 国民救援会も参加する「選挙の自由を守る共同センター」は9月30日、中央選挙管理会に対し、国民審査の意義の宣伝や投票方法の改善などを申し入れました(別項)。宣伝物も活用し、「憲法を守らない裁判官に×印を」の声を大いに広げましょう。

 
  最高裁裁判官の国民審査
憲法守らぬ裁判官に×∴を
衆院選と同時に行われるもう1つの国民の審判

 衆院選とあわせて、最高裁裁判官の国民審査が行われます。今回の国民審査の対象となっている6人の裁判官の略歴や、最高裁で関与した事件の判断を紹介します(なお、津野修裁判官が10月19日に、島田仁郎長官が11月21日にそれぞれ70歳の定年となり、総選挙日程によっては、審査対象の裁判官が増えることもあります)。なお、国民救援会の支援事件にかかわって、勝利判決・決定は〇、不当判決・決定は●で示しました。(写真提供・共同通信社)

国民審査の対象となる裁判官

涌井紀夫(裁判官出身)66歳第1小法廷 最高裁総務局長、大阪高裁長官などを歴任。
〈判決・決定〉中国人強制連行戦後補償裁判で原告敗訴/住基ネット違憲裁判で住民ら逆転敗訴/NHKの従軍慰安婦報道改編裁判で原告ら逆転敗訴/衆院選の小選挙区の区割規定を合憲/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を合憲/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/●静岡・スズキ思想差別裁判で不当決定

近藤崇晴(裁判官出身)64歳第3小法廷
 最高裁首席調査官、仙台高裁長官などを歴任。
〈判決・決定〉両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/●宮城・北陵クリニック事件で不当決定/●大阪・えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定

櫻井龍子(行政官出身)61歳第1小法廷
 労働省に入省。日本労働協会国際部長、大阪府生活文化部長、労働省労政局勤労者福祉部長、労働大臣官房審議官、労働省女性局長などを歴任。このほか、内閣府情報公開審査会委員、九州大学法学部客員教授。初の戦後生まれの最高裁判事。 
 2008年9月任命。

那須弘平(弁護士出身)66歳第3小法廷
〈判決・決定〉衆院選の小選挙区の区割規定を合憲/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を合憲/東京・「君が代」伴奏裁判で原告敗訴/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/●大阪・えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定/●宮城・北陵クリニック事件で不当決定/●大阪・東住吉冤罪事件(朴さん)で不当決定/○大阪・大阪地裁所長オヤジ狩り事件で元少年の「無罪」確定

田原睦夫(弁護士出身)65歳第3小法廷
 日弁連司法制度調査会副委員長などを歴任。
〈判決・決定〉衆院選の小選挙区の区割規定を合憲/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を違憲/東京・「君が代」伴奏裁判で原告敗訴/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/●宮城・北陵クリニック事件で不当決定/●大阪・えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定/○大阪・大阪地裁所長オヤジ狩り事件で元少年の「無罪」確定

宮川光治(弁護士出身)66歳第1小法廷
 日弁連司法基盤整備・法曹人口問題等基本計画策定協議会座長、最高裁司法修習委員会委員、日弁連法務研究財団法科大学院認証評価委員会委員、日弁連懲戒委員会委員長などを歴任。
 2008年9月任命。

不適任な裁判官を罷免に

 最高裁裁判官の国民審査は、憲法(79条)で定められた大切なもので、主権者である国民が、最高裁を監視し、適任でない裁判官をやめさせる制度です。
 内閣が任命した最高裁裁判官を、任命後初めて行われる衆院選の際に国民が審査します。その後は10年ごとに同様に審査します。
 投票の結果、「不信任」票が投票数の過半数となった裁判官は、罷免(リコール)されます。

不信任には「×」印を記入

 現行の国民審査では、対象となる裁判官ごとに、不信任とする場合のみ「×」印を付けます。何も書かない場合は、信任と見なされ、その他の記入は無効とされます。本来であれば、信任・不信任・棄権の意思が明らかになるような投票方法にすることが必要です。
 なお、信任か不信任かの判断がつかない場合は、投票用紙を受け取らないか、受け取った投票用紙を返します。

審査に関する運動は自由

 「憲法の番人」であるべき最高裁。しかし、これまでの最高裁は、多くの裁判で国や大企業を擁護し、言論弾圧や冤罪を追認してきました。本来の役割を果たさせるためにも、「憲法を守らない裁判官」に「×」印を付け、国民の意思を示すことが必要です。
 国民審査に関する運動は、選挙と違い、虚偽宣伝以外の制限はありません。街頭宣伝や集会などで、国民審査の意義を広く知らせましょう。

 

 
  滋賀・日野町事件
一日も早く再審を
12都府県から75人 学習・交流のつどい

 滋賀県日野町で発生した強盗殺人事件の犯人とされた阪原弘さんは、無期懲役が確定し、現在、広島刑務所から裁判のやり直し(再審)を求めています。
 この日野町事件の「学習と交流のつどい」が10月11日、地元・日野町の必佐公民館で開催され、阪原さんの家族、地元住民も含め12都府県から75人が参加しました。
 まず弁護団が、大津地裁の再審請求棄却決定の不当性と、大阪高裁で弁護団がすすめてきたさまざまな再現実験結果などを中心に報告しました。
 つづいて、阪原さんの次女・則子さんが、「再審請求が棄却された時は、家族全員が落ち込み、立ち上がれなかった。けれどもみなさんの励ましで、もう一度たたかう勇気をもらった。一日でも早く父を刑務所から取り戻すために力を貸してください」と涙ながらに訴えました。
 発言では、広島の参加者からは「阪原さんの健康保持と処遇改善のため粘り強く刑務所と交渉をする」、500筆を超える署名を集めて参加した愛知からは「救援会の各支部が独自の現地調査をするなど、名張事件とともに日野町事件の支援を強めている」などの発言が出されました。
 つどいでは、日野町事件の真実を広く伝える、再審開始要請署名運動を強化する、刑務所への健康保持と処遇改善を求める要請を行う、阪原さんと家族を励ます、弁護団の活動を支えることなどを確認しました。
 なお、つどいの前に、大阪と京都の宣伝カーも日野町に入り、宣伝や署名行動を行いました。