再審開始を認める決定書を手に、笑顔で握手を交わす桜井昌司さん(右)と杉山卓男さん
誤った裁判のやり直し(再審)を求めている茨城・布川事件で、東京高裁(門野博裁判長)は7月14日、水戸地裁土浦支部の再審開始決定を支持する決定を出しました。決定は有罪判決の決め手となった「自白」の信用性や「目撃」証言を否定し、有罪判決に「合理的な疑いが生じた」として、検察側の即時抗告を棄却しました。再審開始に向けて大きな一歩を勝ちとりました。
「再審開始」「勝利決定」の垂れ幕を掲げた弁護団につづき、決定書を手にした桜井昌司さんと杉山卓男さんが裁判所の玄関に姿を表すと、守る会が作ったお揃いの黄色いバンダナを身につけて待っていた支援者から拍手と歓声があがり、歓喜の渦に包まれました。
桜井さんは、「やっと真実が勝ちました。日本一の弁護団、日本一の支援者のおかげです」と笑顔で語り、杉山さんは「あと少しの辛抱だが、頑張る」と胸を張り、2人でかたい握手を交わしました。
有罪の証拠は
信用できない
布川事件では、2人と犯行を直接結びつける物的証拠はなく、現場近くで2人を見たとする「目撃」証言や強要されたウソの「自白」によって有罪とされていました。
今回の高裁の審理のなかで弁護団は、「桜井さん、杉山さんとは違う人を見た」とする人の捜査段階の供述調書や、桜井さんの「自白」を録音したテープの改ざんを示す鑑定書などを新証拠として提出しました。この目撃供述や「自白」テープは、検察が長年隠しつづけ、再審請求審で弁護団が追及し、新たに開示させたものです。
今回の決定で東京高裁は、弁護団が提出した新証拠の新規性、明白性を認定。その上で新旧証拠を総合評価し、有罪の根拠となっている「自白」と「目撃」供述の信用性を否定しました。また、「虚偽自白を誘発しやすい環境に置いたことには問題」があると代用監獄を使った捜査を批判しています。
「抗告するな」
検察庁へ要請
桜井さんと杉山さんが逮捕されてからすでに41年。獄中から29年間無実を訴え続け、仮釈放後の2001年に第2次再審請求を行い、たたかい続けてきました。守る会も長年にわたって宣伝、要請、現地調査を重ね、弁護団とともに2人の無実を証明するための再現実験をいくつも繰り返してきました。
決定直後の報告集会で柴田五郎弁護団長は、「桜井くんから日本一の弁護団とほめられたが、弁護団も支援者も請求人も最初から日本一だったわけではない。年を重ね、お互い言い合うなかでやってきた。再審公判で一日も早く無罪を手にするために頑張る」と述べ、会場いっぱいの拍手を浴びました。
報告集会後、守る会と国民救援会、桜井さんの妻・恵子さんは東京高検を訪れ、特別抗告を断念するよう要請しました。守る会では抗告期限の22日まで、連日東京高検へ要請行動を行います。
〈激励先〉 〒113―0034 文京区湯島2―4―4 平和と労働センター5階 桜井さん杉山さんを守る会
〈布川(ふかわ)事件〉 1967年、茨城県利根町布川で起きた強盗殺人事件。別件逮捕で自白を強要された桜井昌司さんと杉山卓男さんは、裁判で無実を訴えましたが、78年最高裁で無期懲役が確定。2005年9月、水戸地裁土浦支部が再審開始を決定。検察がこれに不服を申し立て、東京高裁で審理していました。