2008年6月5日号
 
 
  東京・葛飾ビラ配布弾圧事件
最高裁で必ず勝利を
荒川さんと弁護団、上告趣意書提出

 「ビラ配布の自由守ろう」――僧侶の荒川庸生さんが日本共産党の区議団だよりなどをマンションで配布したことを住居侵入罪として不当に逮捕・起訴された葛飾ビラ配布弾圧事件で、荒川さんと弁護団は5月20日、最高裁に上告趣意書を提出し、報告集会を行いました。

 荒川さんと弁護団は、支援者の拍手のなか、上告趣意書提出のため正門から最高裁に入っていきました。

常識欠く有罪

 この事件では、東京地裁は、マンションへのビラ配布を犯罪とする社会通念は確立していないとして、荒川さんを無罪としました。ところが、東京高裁は、マンションの玄関ホールにチラシの投函を禁ずる張り紙があったこと等を理由に、住居侵入罪の規定を形式的に適用し、表現活動も他人の財産権を不当に侵害することは許されないとして有罪判決を出しました。この不当判決に対し、「常識を欠いた逆転判決」(朝日)、「表現の自由 萎縮しないか」(沖縄タイムス)と多くの批判が起こりました。

弁護団が批判

 最高裁での逆転無罪をめざし今回提出された上告趣意書は、高裁判決を厳しく批判しています。
 荒川さんの行為は、日本共産党の区議団だよりなど政治的意見を載せたビラを配布するという、民主主義社会において特別の重要性をもつ「表現の自由」の行使です。そしてオートロックでないマンションに、日中ビラを配布する目的で平穏に数分間立ち入っただけというものです。このような正当な行為に対し、高裁判決は、具体的にどのような不当な財産権侵害があったのか、その内容を明らかにしないで荒川さんを有罪にしました。高裁判決の論理に従えば、財産権侵害を口実にどんな時でも表現行為を制約することができることになり、憲法が表現の自由を保障した意味がなくなってしまいます。したがって、荒川さんの行為に住居侵入罪を適用し有罪とすることは、憲法21条に反し、違憲です。
 また地裁が採用した荒川さんに有利な証拠(関係者以外立入禁止の看板の設置が事件後であったことなど)も無視しています。

急速な運動を

 報告集会で荒川さんは、自らも提出した趣意書に、「最高裁が有罪判決を出すなら戦前の治安維持法が再来する」と強調したことを紹介し、「五月晴れのような良い判決を勝ちとるため頑張りましょう」と訴えました。
 最高裁は4月に立川自衛隊官舎ビラ配布事件で不当な有罪判決を出し、また、選挙弾圧大石市議事件では上告趣意書提出から2カ月足らずで判決を出しています。このような状況からも、無罪判決をめざし、全国で急いで世論を高めましょう。
 
〈要請先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁第2小法廷・今井功裁判長
〈激励先〉〒124―0011 葛飾区四つ木5―2―12―202平和センター ビラ配布の自由を守る会 рO3(3826)0252

 
  なくそうえん罪! 救おう無実の人々 関西市民集会
当事者・家族が胸うつ訴え
450人を超える参加

 関西の7つの冤罪事件の被害者と家族が、自らの体験を生々しく語る「なくそうえん罪! 救おう無実の人々 関西市民集会」が5月18日、関西6府県の実行委員会主催で大阪市内で開かれ、450人を超える参加で盛況に終わりました。
 京都・長生園不明金事件の西岡廣子さんが政治権力とのたたかいを赤裸々に語り、滋賀・えん罪日野町事件、奈良・えん罪香芝強制わいせつ事件、大阪・東住吉冤罪事件、大阪・えん罪高石小学校強制わいせつ事件の当事者や家族が、こみ上げる悔しさを抑えながら無実を訴え、参加者に感動を与えました。名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんのメッセージが読み上げられ、4月に無罪判決を確定させた大阪・地裁所長オヤジ狩り事件の岡本太志さんと藤本敦史さん、犯人とされた少年らが登壇しました。
 第2部は、シンガーソングライター野田淳子さんが、日野町事件の阪原弘さんを激励する歌「父へ」と茨城・布川事件の桜井昌司さんが作詞作曲した「ゆらゆら春」の2曲を披露。桜井さんも駆けつけ、再審で必ず無罪を勝ちとりたいと訴えました。鹿児島・志布志事件で「踏み字」の被害を受けた川畑幸夫さんも報告。冤罪をなくすために取調べの「可視化」実現を強調しました。
 最後に実行委員会を代表して、国民救援会兵庫県本部・藤木洋子会長から「この関西から、この国から冤罪事件を起こさせない活動を皆様の先頭に立って頑張ります」と力強い挨拶。会場から割れんばかりの大きな拍手が起こりました。集会のもようは、当日・翌日のNHKニュースでも報道されました。

 
  東京・国公法弾圧堀越事件
処罰は自由権規約違反
国際法学者が証言

 国公法弾圧堀越事件の第5回公判が5月21日、東京高裁で行われ、弁護側証人として、京都学園大学の西片聡哉講師(国際法)が証言に立ち、堀越明男さんの行った行為は、国際人権(自由権)規約で保障される表現の自由であると主張し、公務員の政治活動を禁じた国公法は同規約に違反していると指摘しました。
 国際人権規約は、日本も1979年に批准しており、国内の一般法令よりも優先して適用することが定められているものです。
 西片証人は、一審有罪判決においての規約の解釈は、国際的な基準を用いておらず誤りであると主張。規約の解釈に影響を与えているヨーロッパ人権条約と、この条約に基づいて設置されているヨーロッパ人権裁判所の判例を分析して規約を解釈・適用すべきだと主張しました。
 そのうえで同裁判所の判例を4つ紹介。警官や裁判官など、すべての公務員の言論活動は認められており、制約は例外であると述べました。
 また、同裁判所では、表現の自由についての審査は厳格な基準のもとで、具体的・実体的な審査がなされていると紹介。この点から見ても、一審では堀越さんが公務と離れて休日にビラを配ったことが、行政の中立性にとって具体的にどのような危険があったか立証されていないと述べ、人権保障は国際的基準を考慮して判断するのが世界の常識だと強調しました。

 
  富山・浅谷不当解雇撤回訴訟
セクハラを否定逆転の勝利和解

 知的障害者更生施設「渓明園」「花椿」の管理運営のずさんな実態を改善しようと、浅谷敬太さんが内部告発したところ、セクハラをでっち上げられて懲戒解雇され、撤回を求めた訴訟で、一審では敗訴の不当判決でしたが、5月14日、名古屋高裁金沢支部で和解しました。和解では、@浅谷さんは施設利用者へのセクハラはしていないA浅谷さんへの懲戒解雇は無効B浅谷さんは4月末日で合意離職することを確認。施設側は浅谷さん夫妻への解決金を支払います。
 今回の和解について浅谷さんは、「裁判は終わりましたが、職場を健全化し、利用者が安心して暮らせるよう福祉を充実させてほしい」と述べました。
 裁判を支えてきた不当解雇撤回闘争支援共闘会議は、和解をうけて、利用者の人権を何よりも大切にするよう求め、施設や指導する行政に申し入れることにしています。
 支援共闘会議は提訴以来、傍聴や署名などの支援運動を展開。国民救援会富山県本部も、石川県本部と協力して浅谷夫妻を支援してきました。

 
  栃木・足利事件
不当決定はね返し全国現地調査行う

 菅家利和さんが再審を訴えている栃木・足利事件の第9回全国現地調査が5月17〜18日、足利市内で行われ、5都県50人が参加しました(写真)。今年2月、宇都宮地裁で出された再審請求棄却の不当決定をはね返そうと行われました。
 90年に足利市内で起きた幼女誘拐・殺人・死体遺棄事件で、菅家さんがウソの「自白」をさせられ、無期懲役が確定。02年に再審請求を申し立てました。
 まず事前学習を行い、弁護団から不当決定と弁護団の即時抗告申立ての内容について報告を受けました。
 学習後、現地調査へ。事件の関連場所などを歩き、有罪判決の問題点を確認。参加者は、大勢の人がいるなかを幼女を自転車に乗せて通ったとされているにもかかわらず目撃者がいないことの不自然さや、殺害方法の矛盾、犯行は時間的に不可能なことなど、無実を確信しました。
 まとめの会議では、有罪の決め手となったDNA鑑定の再鑑定を実施させることや公正裁判を求めて東京高裁への運動を強めることを確認しました。
 その後、参加者は市内で街頭宣伝を行いました。