2008年5月15日号
 
 
  刑事裁判の鉄則守らせた
岡本さん 藤本さん 無罪確定
大阪・オヤジ狩り事件 高裁も無罪

 2004年大阪市内で発生した大阪地裁所長オヤジ狩り事件で、大阪高裁(片岡博裁判長)は4月17日、一審の無罪判決にたいする検察側控訴を棄却し、岡本太志さんと藤本敦史さんにふたたび無罪判決を出しました。検察が上告を断念し、判決は確定しました。(記事は、大阪府本部・伊賀カズミさんからの通信)

 「主文、本件控訴を棄却する」
 裁判長は、一審無罪判決に対する検察の控訴を棄却し、再び無罪を言い渡しました。

事実認定は後退

 今回の大阪高裁の判決は、所長に直接体当たりしたとされる少年K君のアリバイが携帯メールの履歴によって証明され、動かしがたいことから、藤本さん、岡本さんを犯人とするには合理的な疑いを入れる余地があるとし、無罪としました。
 しかし同時に、犯行現場を走り去る犯人の姿をとらえた防犯カメラのビデオ映像は画像不鮮明なために藤本さんという183センチの人物の存在を否定することも、また証明することも不可能として退け、かつ少年たちの供述に対しても、一定程度の信用性があると指摘しています。

刑事裁判の鉄則

 一審は、3人の少年たちの「自白」の任意性・信用性ともに否定し、ビデオ映像の解析結果から藤本さんの犯人性を否定、さらには少年1人のアリバイを認めて完全な無罪の判決を出しました。
 今回の判決は、この一審判決の批判かと見まがうほどの内容で、傍聴者からも疑問の声が上がりましたが、大阪府本部会長でもある戸谷弁護団長は「無罪という結論を維持したことに大きな意味がある」と語りました。
 少なくない冤罪事件の裁判で、物的証拠がないにもかかわらず、矛盾だらけの「自白」によりかかり、合理的疑いを裁判官の推測で打ち消して有罪判決が出されていることと比べれば、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を守ったのです。
 何よりも藤本さんや岡本さんが、弁護人や家族の励ましを受け、一通の自白調書も作らせなかった意義は大きいと実感しています。

運動に確信持つ

 昨年2月に支援する会を結成し、裁判所周辺などで数多くの宣伝署名行動を行い、現地調査も3回行いました。署名も243団体、1万2千余筆を集めました。国民救援会大阪府本部と支援する会でリーフレットを1万部作成し、多くの市民に事件の真実を知らせました。
 このような活動が、被告本人たちのがんばりと弁護団の奮闘と一緒になって、今回の2度目の無罪判決となったのだと思います。

警察の異常捜査

 この事件では、警察が地元の補導歴などのある少年を別件で連行・逮捕し、暴力的な取調べで自白を迫りました。1人の少年が警察の暴力によりウソの自白をさせられると、その「自白」から芋づる式に逮捕したのです。
 藤本さんの取調べは、床に転がされ、刑事が頭の上に尻を乗せ、踏みつけた状態で自白を迫るという屈辱的なものでした。また、少年たちは、刑事に暴言を吐かれ、首をしめられたり、腹を殴られたり、長時間立たされ、挙げ句の果てに、取調べの机を持ち上げられ、「いい加減にしろ!」とたたき落とされたりもしました。
 このような異常な捜査により、4人の犯人に対して10人以上の少年たちがウソの供述をさせられました。

徐々に広がる喜び

 判決後に開かれた「無罪判決報告集会」で、藤本さんは「無罪でほっとしているが、裁判長からはっきりと『君らはこの事件に関係ない』と言って欲しかった」と述べ、岡本さんも「一日も早く事件と関係のない生活を送りたい」といずれも手放しでは喜べない感想を述べています。
 しかし、弁護団の報告により、会場内には徐々に無罪の喜びが広がっていきました。

無罪を力にして

 全国から「上告するな」の電報やハガキ、毎日行われた要請により、検察が上告を断念し、無罪判決が確定しました。
 今後は、まだ継続中の少年2人のたたかいを勝利させること、そしてK君の国賠裁判で、警察や検察の責任を明らかにし、追及する闘いにつなげたいと思います。

 
 

茨城・布川事件
夏ごろには決定か
守る会が総会開く

 「布川事件・桜井昌司さん杉山卓男さんを守る会」の第31回総会が4月19日、都内で開かれ、100人が参加しました。
 清水誠代表世話人のあいさつで開会、国民救援会の山田善二郎会長が「再審を閉ざそうとする流れを断ち切り、再審の扉を開かせるために力をあわせてがんばりましょう」と来賓のあいさつを行いました。

 第1部は、弁護団報告と総会が行われました。
 三浦直子弁護士が、水戸地裁土浦支部の再審開始決定のポイントを踏まえたうえで、これまでの東京高裁での審理内容をわかりやすく説明。そのなかで、再審開始決定に不服を申し立てた検察官が、なんらまともな立証活動も行わない態度を厳しく批判しました。また、裁判所が採用した鑑定人も、殺害方法と「自白」の矛盾を認めるなど、検察立証が成功していないことを解説しました。4月30日に弁護側の最終意見書と、「普通の生活を返してほしい」などと訴える再審請求人の桜井昌司さんと杉山卓男さんの上申書を提出し、5月30日に裁判所・検察官・弁護人の三者協議を行い、夏ごろに裁判所の決定が出される見通しであることが報告され、最終盤の支援強化を訴えました。
 つづいて、「守る会」の中澤宏事務局長が、この間の活動報告と運動方針案を提案。要請はがき1万通と要請署名10万筆を達成するために5、6月に力を集中しようと訴えました。また、ひきつづき裁判所への要請と宣伝を強めること、第18回全国現地調査(8月30〜31日)を成功させることを提案しました。

 第2部では、「守る会」作製の事件のビデオが上映され、つづいて引野口事件・片岸さん親子をはじめ各事件関係者からの連帯のあいさつが行われました。
 最後に、桜井さんと杉山さんが、再審開始を勝ちとるために全力で奮闘する決意を述べて、大きな拍手に包まれました。
〈再審開始要請先〉〒100―8933 千代田区霞が関1−1−4 東京高裁・門野博裁判長

 
 
取調べの全過程の可視化を
全労連・自由法曹団・国民救援会が国会行動

 警察や検察による密室での取調べにおける「自白」強要をなくすために、取調べの全過程可視化(録音・録画)を求める法案が、民主党から国会に出されています。
 全労連・自由法曹団・国民救援会は法案の早期成立をめざして、4月22日、参議院議員会館で集会を開き、衆参両院の法務委員への要請を行いました。当日は、3野党の議員を含め34人が参加しました。

院内集会開く
3野党が参加

 まず、「可視化」法案について民主党の松野信夫参議院議員が報告しました。松野議員は、法案の内容を説明し、「いま参議院法務委員会では、与党が反対し法案審議が始まっていない」と実情を紹介、法案成立へ協力を訴えました。つづいて、日本共産党の仁比聡平参議院議員が、「違法・不当な警察の取調べ手法を根本的に転換することは、党派を超えた民主主義の課題だ」とあいさつ、社会民主党の福島瑞穂参議院議員は「国連からも可視化せよとの勧告が出ている。裁判員制度の開始前に可視化を実現させたい」と述べました。
 不当な取調べの体験者として、布川事件の桜井昌司さんが発言しました。桜井さんは、密室で朝から晩まで警察による長時間の取調べを受け、「自白」を強要された体験を語りました。そして、ウソの「自白」をしたところだけを録音したテープが有罪の証拠とされたことを紹介し、警察庁・最高検が狙っている取調べの一部だけ「可視化」の危険性を訴えました。

全法務委員へ
要請し訴える

 国会要請に移り、衆院法務委員34人、参院法務委員20人の控え室を手分けして回り要請しました。
 総括集会では、警察庁が国会議員に働きかけを強めていることも報告され、参加者は、法案を成立させるために、急いで世論を広げていくことを確認しました。

 
  東京・三多摩で夕べ
ストップ冤罪
地元2事件の勝利めざし

 「ストップ冤罪 三多摩の夕べ」が4月15日、国分寺市内で開かれ、370席のホールは満員、ロビーにもモニターで視聴する人が溢れ、盛況となりました。「夕べ」は、最高裁でたたかう沖田国賠訴訟と町田痴漢冤罪事件を世論にアピールしようと開かれたものです。
 はじめに、きたがわ・てつさんによる支援コンサート。つづくトークイベントでは、鹿児島・志布志事件で「踏み字」の強要を受けた川畑幸夫さん、元裁判官の秋山賢三弁護士を迎え、2事件の当事者をまじえ冤罪を生む司法の問題に迫りました。川畑さんはみずからの体験から「警察が事件を作っている」と取調べの全面可視化の必要性を語り、秋山弁護士は捜査と裁判の両面から「冤罪を生み出す構造」を解明しました。
 最後に、2つの事件の本人と家族が支援を訴え、会場から長い拍手が贈られ、約32万円のカンパが寄せられるなど、冤罪をなくそうという市民の熱意ある「夕べ」となりました。

 
  葛飾・ビラ配布弾圧事件
ビラ配布の自由守ろう

 「ビラ配布の自由を守ろう」――東京・葛飾区内のマンションに日本共産党の区議団だよりなどを配布した荒川庸生さんが住居侵入罪で不当に逮捕・起訴された葛飾ビラ配布弾圧事件。
 一審・東京地裁では、ビラ配布を犯罪とすることは「社会通念とはいえない」として無罪を勝ちとりましたが、二審・東京高裁では住居侵入罪にあたるとして不当な有罪判決がだされました。荒川さんは最高裁に上告。5月20日には上告趣意書を提出します。守る会では、最高裁での勝利めざし、出足早く取り組みを強めています。ビラ配布の自由を守る会・小松香代子さんからの通信です。

最高裁、変えよう
守る会総会に201人

 ビラ配布の自由を守る会は4月21日、第4回総会を葛飾区内で行い、201人が参加しました。
 まず、世話人で憲法学者の小沢隆一さんが「(イラク派兵違憲の)名古屋高裁判決が示しているように、しっかりと裁判所に事実を認定させ、憲法の目から見れば荒川さんはなんら法に違反していない、むしろ憲法に基づく正当な行為なのだということを論証していくこと、圧倒的に多くの国民の声を集めていくことが大切」と、開会のあいさつで訴えました。つづいて、日本共産党の都議団、同葛飾区議団から挨拶。
 弁護団報告では、中村欧介主任弁護人が立川自衛隊ビラ事件の最高裁判決を批判した上で、葛飾事件の固有性を明らかにして裁判勝利の方向を語りました。
 丹羽徹・大阪経済法科大学教授が「若者たちとビラ弾圧」と題して記念講演を行い、昨年、荒川さんを招いた授業の話しなど、いまの若者の民主主義感覚についてお話しをされました。そのなかで、ビラ配布で逮捕されるということ自体考えもしなかったことだったという学生たちの感想文が紹介されました。
 立川ビラ事件・大洞俊之さんや、国公法弾圧堀越事件・堀越明男さん、世田谷国公法弾圧事件・宇治橋眞一さんから連帯のあいさつをうけました。そして、荒川庸生さんが、「最高裁で勝たないといけない。小さな声の積み重ねで要塞のような最高裁を変えていくような気概を持って、みなさんのお力を寄せていただきたい」と支援を訴えました。

 最高裁に提出した、地元の集いでの「寄せ書き」

無罪判決を求め
最高裁宣伝と要請

 ビラ配布の自由を守る会は4月18日朝、単独での初の最高裁要請行動を、荒川さんの妻・英子さんや守る会会員、国民救援会のメンバーら20数名の参加で行いました。
 強い風雨のなかの宣伝行動、つづく要請では署名2576筆(累計5820筆)、世話人会決議等と地元亀有で行った「集い」の寄せ書きを提出。寄せ書きの巻紙を広げると部屋の隅から隅まで届くほど長く、たくさんの集い参加者が書いた墨色の文字が輝いていました。要請では、英子さんが「最高裁が最後だと思って頑張っています。公正な裁判をお願いします」と訴え、他の参加者もビラの大切さをこもごも語り、「無罪判決を」と要請しました。

 
  東京・世田谷国公法弾圧事件
憲法軽視の論告
検察官 罰金10万円求刑

 厚生労働省職員の宇治橋眞一さんが、休日に職場から離れた地域で「しんぶん赤旗」号外を配ったことが国家公務員法(政治活動禁止)に違反するとされた世田谷国公法弾圧事件で、4月16日、東京地裁で検察官による論告求刑が行われました。
 論告で検察官は、ビラ配布行為について、「特定政党の直接かつ積極的な支援活動であり、極めて政治的偏向の強い行為」であるとしたうえで、宇治橋さんのビラ配布行為が「行政への国民の信頼を著しく害する恐れがある」などと決めつけて、罰金10万円を求刑しました。
 論告は、逮捕時に宇治橋さんが「511枚という極めて大量のビラ」を持っていたとして、「犯行は大がかりなもの」で「組織的計画的な犯行の一環」であるなどと、市民にとって身近な言論活動であるビラ配布を、ことさら重大犯罪のように描き出しました。
 また、国公法の政治活動禁止規定が憲法や国際人権規約に違反するとの弁護団の主張に対し、34年前の猿払事件最高裁判決と国公法弾圧堀越事件の東京地裁不当判決を引用するだけで、まともな論証を行いませんでした。
 さらに、宇治橋さんが現行犯逮捕はデッチ上げだと批判している点について、「被告人は虚偽の弁解をし、罪を免れようとしている」などと述べ、警察の違法逮捕を擁護しました。
 公判後の報告集会で弁護団は、検察官の論告は憲法を軽視し極めて形式的な内容で、公務の仕事が民間に移行している現在の実態にも反していると指摘、時代遅れの最高裁判例に依拠したものであると批判しました。そして、「最終弁論でしっかりと反論し、無罪を勝ちとりたい」と決意を述べました。「許さない会」からは、判決にむけて署名へのさらなる協力と、6月24日の弁護側の最終弁論への傍聴を呼びかけました。

 
  静岡・袴田事件
裁判のやり直しを
第2次再審を申立て

 3月24日に最高裁で再審請求を退ける不当決定が出された静岡・袴田事件は、4月25日、第2次再審請求を静岡地裁に申し立てました。無実の死刑囚・袴田巌さんは長期にわたる拘禁生活によって拘禁症がすすみ、姉の秀子さんが再審の申立人になりました。
 申立てにあたり弁護団は、事件から約1年後に発見された、血の付いた衣類など犯行時の着衣とされた「5点の衣類」に関する実験結果などを新証拠として提出しました。
 4月15日には、国民救援会静岡県本部と中央本部の代表が法務省を訪れ、袴田巌さんを治療に専念できるように一日も早く医療施設に移し、健康回復を図るよう努力することを求め要請しました。