2008年2月15日号
 
 
  大分・選挙弾圧大石市議事件
最高裁が不当判決
理由も示さず判断逃げる

 大分・豊後高田市の大石忠昭さん(日本共産党市議)は、2003年のいっせい地方選挙の際に、後援会員に後援会ニュースを配布したことを、公職選挙法違反(戸別訪問、文書頒布、事前運動)で弾圧されました。一、二審で不当判決を受けた大石さんは、公選法は憲法と国際人権規約に違反すると最高裁に迫りました。しかし、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は、上告趣意書提出からわずか2カ月足らずの1月28日、正面から検討することなく、上告棄却の不当判決(罰金15万円)を言い渡しました。大石さんと支援者は、不当判決に抗議し、自由な選挙の実現のために奮闘する決意を固め合いました。

 判決には、13都府県から90人が駆けつけました。支援者は、大石さんと弁護団の入廷を拍手で送りました。

大石さんが
法廷で抗議

 11時45分。法廷正面の扉が開き、3人の裁判官が入廷。着席すると同時に大石さんが立ち上がりました。
 「裁判長! 被告人の大石忠昭です。不当な判決期日の指定に抗議します」
 職員に取り囲まれながらも大石さんは、「憲法と国際人権規約を正しく解釈し、世界に恥じない判決を出してください」と訴えました。しかし、裁判長は「公職選挙法の関係規定は憲法に違反しない」と上告棄却の判決を言い渡しました。
 判決は、憲法違反の主張についてはこれまでの最高裁判例をただ引用し、国際人権規約違反の主張については、「国際規約に違反しないと解される」とし、なぜ「解される」のかの理由も述べず、大石さんの訴えを退けました。最高裁は「人権の砦(とりで)」としての責務を放棄しました。
 判決後、大石さんと支援者は、最高裁に向け、「不当判決を許さないぞ」「最高裁は憲法を守れ」と抗議しました。

たたかいの
成果に確信

 判決後、衆議院議員会館で報告集会が開かれました。
 河野善一郎・主任弁護人の判決報告につづき、割れんばかりの拍手のなか、大石さんがあいさつに立ち、途中、声をつまらせながら支援へのお礼と決意を述べました(別項)。共産党国会議員5人も駆けつけ、穀田恵二衆院議員が、市田忠義書記局長のメッセージを読み上げたあと、「昨年の市議選で大石さんがトップ当選したことで、国民的審判は下っている」と述べ、支援者や公選法裁判の元被告人から激励の発言がつづきました。
 大石事件は、これまで40年におよぶ公選法裁判のたたかいを前進させました。一審では、裁判史上初めて、元国際人権規約委員(エバットさん)が証人に立ち、「公選法の制限は国際人権規約に違反する」と証言しました。支援も全国に広がり、一、二審では短期間で10万筆を超える署名を集め、裁判所に迫りました。この運動と地元の「議席を守る会」のとりくみによって、一審で付けられた公民権停止を二審ではずさせ、大石さんの議席を守りました。
 参加者は、不当判決への怒りとともに、たたかいの成果に確信をもち、自由な選挙の実現をめざす決意を固め合いました。
 兵庫、大阪では、不当判決に抗議し、早速宣伝が行われ、市民からも「鹿児島・志布志事件と同じだ」「ビラ配って逮捕、ほんまか!」など怒りの声が寄せられました。
〈抗議先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁判所第2小法廷・中川了滋裁判長


選挙の自由めざす 大石忠昭さん

 全国のみなさんのあたたかいご支援に支えられて、最高裁までたたかいをすすめてきました。みなさんの力を借りて、選挙の自由を勝ちとる先頭にたってたたかいたいと決意し、たたかいが始まったさなかに判決日の通告を受けました。
 一審、二審では、10万の署名、62回も要請行動を積み上げてきました。最高裁は、国民の運動がさらに広がることを恐れたのです。ますます日本中に「言論の自由を守れ」「民主主義を守れ」という運動が広がることを恐れて判決を強行したのだと思います。最高裁には、憲法や国際人権規約、国民の常識は通用しないのでしょうか。私は、たたかわずして逃げられたことが悔しいのです。
 しかし、たたかいは終わったわけではありません。私は選挙の自由を勝ちとるために、これからも支援者のみなさんと力を合わせて、この公選法を変えるためにがんばっていきたいと思います。
 権力への最大の反撃は、来るべき総選挙で勝つこと、そして国民救援会を拡大・強化することです。その先頭にたってたたかいぬきます。長い間ご支援ありがとうございました。

 
  静岡・袴田事件
無実のボクサー救おう
日本プロボクシング協会が支援イベント

 元プロボクサーの死刑囚・袴田巌さんが再審を求めてたたかっている静岡・袴田事件を支援しようと、日本プロボクシング協会が主催したチャリティーイベント「いますぐ、袴田さんを自由に!」が1月24日、都内で行われ、1250人が参加しました。ボクシングの現・元世界チャンピオンらが揃って支援を呼びかけ、袴田さんへのプロボクサーの名誉ライセンスの授与式が行われました。

 会場となった後楽園ホールでは、中央のリングがステージとなりました。
 弁護団全員がリングに上がり、代表して西嶋勝彦弁護団長があいさつしました。「再審開始を勝ちとるには、弁護団だけでは不十分。みなさんの力を借りて最高裁を動かしていただきたい」と話しました。この事件の一審で死刑判決を書いた元裁判官の熊本典道さんもリングに上がり、「(袴田さんは)無罪だと信じている。かつて冤罪事件で無罪になった人は、法廷外の人びとの協力によって導かれたものが多い。みなさんの絶大な支援を」と訴えました。
 主催者を代表して、袴田巌支援委員会の大橋秀行委員長(東日本ボクシング協会会長)があいさつに立ち、「我々の仲間であり先輩の袴田さんが、冷たく寒い拘置所にいることを考えると胸が熱くなる。ボクシング協会は一丸となって袴田さんを応援しています。袴田さんはいま、時間とのたたかい。最終ラウンドのゴングは鳴りました。応援してください」と、支援を求めました。
 「俺は生きのびた、次はあんただ。袴田さんを自由に」――映画『ザ・ハリケーン』のモデルとなった、アメリカの元プロボクサーで、終身刑から再審無罪を勝ちったルービン・カーターさんからのメッセージがビデオで流されました。このほか、世界チャンピオンのスパーリングやちびっ子ボクシング教室、内藤大助・WBC世界フライ級チャンピオンも参加したチャリティーオークションも行われ、会場を沸かせました。

 最後に、日本のボクシング界の発展に貢献した袴田さんに元気を出してもらおうと、プロボクサーの名誉ライセンスが授与されました。袴田さんの代わりに姉・秀子さんが、リング上でライセンスを受け取り、「巌はボクシングのことしか知らない。今後もボクシングのことを話していきたい。みなさんの協力があるから頑張れる」と支援への感謝を述べました。

〈袴田事件〉1966年、静岡県で起きた一家4人の殺人・放火事件で、元プロボクサーの袴田巌さんが犯人として逮捕・起訴され、死刑判決が確定。現在71歳の袴田さんは、東京拘置所から最高裁に再審を申し立てています。

 
  神奈川・古本店主強制わいせつ冤罪事件
Aさん、無実訴える
3月18日に判決

 古本屋を経営していたAさんが、アルバイトの女性にわいせつ行為を働いたとして逮捕・起訴され、Aさんが無実を訴えている古本店主強制わいせつ冤罪事件の最終弁論が1月29日、横浜地裁横須賀支部で開かれました。弁護団が改めてAさんの無罪を主張し、裁判は結審。判決日が3月18日午前10時と決まりました。
 最終弁論で弁護団は、本件が自称「被害者」のちょっとしたいたずらメールから始まり、母親が店に怒鳴り込み、のちに引き下がれなくなった虚構事件であることを克明に述べるとともに、警察・検察の捜査、取調べの問題点を指摘しました。つづいてAさんが陳述に立ち、1年半にわたる不当な勾留や不当な取調べに対する怒りや苦しみ、店を閉めなければならなくなった悲しみを述べました。
 報告集会では、判決日まで裁判所への要請を強めることを確認しました。
〈無罪要請先〉〒238―0015 横須賀市田戸台3 横浜地裁横須賀支部・忠鉢孝史裁判長

 
  全動労訴訟
JR採用差別は違法
東京地裁 国側の責任を認める

 1987年の国鉄分割・民営化の際に、民営化に反対した国労と全動労(現在、建交労)の組合員1047人が不採用・解雇されました。この事件で、北海道の全動労の組合員と遺族58人が、国鉄清算事業団を引き継いだ鉄道建設・運輸施設整備支援機構を相手に損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁は1月23日、「全動労組合員を不利益に扱ったのは違法」として、国側に賠償を命じました。
 佐村浩之裁判長は、民営化反対が「不利益に作用しているとみるのが相当」として採用差別を認定。組合に対して「中立保持義務」を負う国鉄が差別を行ったことは不法行為に当たるとして、1人あたり550万円の支払いを命じました。
 国民救援会北海道本部は不当解雇以来、国労と全動労のたたかいを支援してきました。判決の2日後に開かれた新春旗びらきでは、池田孝治争議団長の喜びとお礼のあいさつに、熱い拍手が送られました。

 
  福井女子中学生殺人事件
再審開始求め裁判所へ要請

 「再審開始で無罪判決を」と、福井女子中学生殺人事件の再審を求め、1月17日、国民救援会福井、石川、富山3県本部の代表18人が名古屋高裁金沢支部を訪れ、第7次の要請行動を行いました。要請では、団体署名65、個人署名1453人分(累計166団体、8530人分)を提出し、無実を訴えている前川彰司さんの父・禮三さんが「息子は病気入院中で、残念だが来れない。息子はやっていません。一日も早くやり直して無罪を明らかにしてほしい」と訴えました。