2005年7月15日号

元国連規約人権委員エバットさんが証言
日本の選挙制度を批判
「戸別訪問は選挙の重要な手段」
公選法は規約に違反
大分・選挙弾圧大石市議事件 支援者に確信与える
大分地裁

 大分・選挙弾圧大石市議事件の第22回公判が6月27日、大分地裁で開かれ、元国連規約人権委員のエリザベス・エバットさん(オーストラリア在住)の証人尋問が行われました。エバットさんは、1993年から2000年まで、学識経験者18人で構成される国連自由権規約委員会(略称・規約人権委員会)の委員を務められ、日本政府報告書審査および日本政府に対する勧告作成に携わられた方です。元国連規約人権委員の証言は、日本の裁判史上初めてのこととなりました。

選挙のときには
十分な情報必要


 公判で通訳人(弁護側2人、検察側2人)につづき宣誓したエバットさんは、はじめに、国際人権規約について総論的に説明を行ったうえで、大石忠昭さんが公選法違反として問われている戸別訪問・法定外文書頒布・事前運動の禁止について、「国際人権規約に適合しない」と述べ、日本の公選法は表現の自由などを定めた国際人権規約に違反していると証言しました。
 エバットさんは、国際人権規約19条に定められた表現の自由は、口頭、手紙、印刷物、あらゆるメディアで伝える権利であり、選挙活動の権利も含まれていること、同25条では投票の権利、選挙される権利も保障されていること、十分な情報が与えられなければ真正な選挙とはいえないと解説しました。
 戸別訪問については、候補者は選挙人に会って訴えることができ、選挙人は候補者の考えを聞いて人物を理解できるので、選挙にとって重要な手段であると強調。買収を理由に戸別訪問を禁止している公選法について「買収は、一般的に貧困や教育水準の低い国の問題となっているが、戸別訪問を制約するのではなく、選挙民の教育を行うことや貧困を解決することが必要です。戸別訪問を制約するには、抽象的ではなく、非常に強い証拠が提出されなければならない」と述べました。

規約を適用して
裁判所は判断を


 つぎに、事前運動については、「政党は、支持を得るために活動している。オーストラリアでは、選挙は終わったときから次の選挙が始まっている、と言われている。規約19条に照らして『事前』というのは理解できず、25条にも適合しない」と証言しました。
 こうした国際人権規約は、国際条約でありどの国にも同じように適用されなければならず、規約を解釈できる唯一の機関が国連の規約人権委員会であるとしたうえで、その機能は各国の裁判所に委譲されており、裁判所によって人権が確保されると、司法の役割を説き証言を終えました。エバットさんの証人尋問は、人権に対する「国際基準」を学ぶ貴重な場ともなり、傍聴に駆けつけた支援者に確信を与えました。
 公判後の報告集会では、バスで24人が参加した宮崎県本部や宣伝カーで参加し公判前後に現地調査と街頭宣伝行動に取り組んだ大阪府本部など、16都府県から250人が駆けつけたことが紹介され、公選法裁判をたたかった中村満吉さんと祝一行さんは、エバットさんとがっちり握手。大石事件の無罪判決を誓い合いました。

次回は本人尋問
最終局面迎える

 
次回7月21日の公判はいよいよ大石さんへの被告人尋問が行われる予定です。
 裁判は最終局面を迎えます。「守る会」は無罪判決を求める署名10万筆達成に向け、全国からのいっそうの支援を訴えています。

エリザベス・エバットさん
□現職
世界銀行行政裁判所裁判官(2003年から同裁判所所長)
国際法律家協会理事
ニューサウスウェールズ大学ロースクール名誉客員教授
□主な経歴
1976〜1988年 オーストラリア家庭裁判所首席裁判官
1984〜1992年 国連女性差別撤廃委員会委員
       (89年〜91年 委員長)
1988〜1993年 オーストラリア法律改正委員会委員長
1988〜1994年 ニューキャッスル大学学長
1989〜1994年 オーストラリア労使関係委員会副委員長
1993〜2000年 国連自由権規約委員会委員
       (99年〜2000年 副委員長)

●国際人権規約(自由権規約)
第19条 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。……あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
第25条 すべての市民は、……次のことを行う権利及び機会を有する。(a)直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。(b)普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。(c)略

国民の言論・内心の自由をおかす悪法
共謀罪が衆院で審議入り
廃案を求めて 緊急に国会要請行動


 犯罪の実行について話し合い合意しただけで罪になる「共謀罪」。その新設を含む刑法などの一部改正案が6月24日、衆議院法務委員会で審議入りしました。政府は、新設の必要性について、「近年のグローバリゼーションの進展に伴い、犯罪行為が容易に国境を超えるようになり、犯罪組織による国際的な犯罪が頻発しております」と改めて国際的な犯罪の取締りであることを強調しました。なお、同法案は上程されてから2年余、法案の問題性や反対運動などによって審議入りを許してきませんでした。
 審議入りをうけ救援会中央本部は緊急に28日、衆議院法務委員に対し、廃案を求める要請を、埼玉・神奈川両県本部の代表とともに5人で行いました。

●法案の問題点

 要請では、次の3点の問題を指摘し、廃案を求めました。
 第1に、もともと国際的犯罪集団の取締りを目的に採択された条約にもとづいて提案された法案にもかかわらず、今回提案されている法案の中身はその目的から大きく逸脱していること。たとえば、対象となる犯罪は、殺人・強盗にくわえて、消費税法や公職選挙法など国際犯罪とは関係のない法律を含め560にものぼり、対象となる「組織」も、サークルや市民団体、労働組合、政党など2人以上の「組織」とされるなど、対象が無限定です。これでは、捜査機関の判断で、恣意的な運用や濫用をされる危険があります。
 第2に、「話し合い」が犯罪となる「共謀罪」の取締りでは、スパイ工作や盗聴など捜査権限が大幅に拡大される危険があること。
 第3に、そもそも相談や話し合いを犯罪として捜査・検挙することは、思想・信条の自由、内心の自由、言論・表現の自由、結社の自由を侵すもので、憲法に違反すること。

●戦争反対運動の監視

 「共謀罪」の本当の狙いは、戦争や悪政などに反対する団体や運動を監視し、弾圧・妨害することにあります。救援会は、廃案を求めひきつづき国会への要請を強めていきます。廃案を求める署名・声を集中してください。
〈廃案を求める要請先〉〒100―8960 東京都千代田区永田町1―7―1 衆議院・河野洋平議長

京都・長生園不明金事件
最高裁が不当決定
まともな検討もせず棄却


京都・長生園不明金事件に対し最高裁第一小法廷(島田仁郎裁判長)は6月29日付で、西岡廣子さんの上告を棄却する不当決定を出しました。6月7日に上告趣意書を提出してからわずか3週間で出されたもので、上告趣意書の内容、とりわけ「一、二審判決は憲法違反」との主張をまともに検討した痕跡は微塵もない、極めて不当な決定です。
 事件は、99年、園部町の社会福祉法人・長生園で3000万円の不明金が発覚し、職員の西岡さんが一部横領したとデッチ上げられ逮捕・起訴されたものです。一審は、長時間にわたり精神的に追い詰められたもとで取られた警察でのウソの「自白」調書に依拠し、懲役1年・執行猶予4年の不当判決を出し、二審も控訴を棄却しました。
〈抗議先〉〒102―8651 東京都千代田区隼町4―2 最高裁第一小法廷・島田仁郎裁判長
〈激励先〉〒622―8790 京都府船井郡園部町木崎町上ヲサ29―3 船井地労協気付 西岡廣子さんを守る会

 宮城・北陵クリニック
事件第2回公判と広がる支援運動

 宮城・北陵クリニック事件の控訴審第2回公判が6月29日、仙台高裁で開かれました。青森、岩手、福島など県外からの参加者も含めて支援する会と救援会員など44人が傍聴しました。
 今回の公判では、今後の橋本保彦東北大名誉教授に対する証人尋問の内容と日程が取り上げられました。橋本教授は一審段階で、5人の患者の急変原因を筋弛緩剤混入による「薬理効果」の可能性があると証言し、これが一審有罪判決の根拠とされました。
 弁護側は、橋本証言の基礎となったと考えられる矢島直・東大助教授による筋弛緩剤のコンピューター解析資料をまず検討した上で、橋本氏への尋問を行うよう求めました。しかし裁判所はこれを拒否し、次回7月20日の公判で橋本氏への尋問をすることになりました。
 救援会と支援する会では、世論を広げようと、毎月2回仙台市内で宣伝を行っています。また6月26日の県母親大会では参加者に宣伝し、署名263人分を集めました。7月2日には石巻市内ではじめて宣伝行動に取り組み、守大助さんのお母さん、石巻支部・県本部など10人でビラ300枚を配り支援を訴えました。25人から署名の協力がありました。また、青森・八戸支部でも毎月、宣伝に取り組んでいます。

劉連仁強制連行事件
一審勝訴取り消し
棄却の不当判決

 劉連仁強制連行・労働事件に対し、東京高裁(西田美昭裁判長)は6月23日、一審の勝訴判決を取り消し、請求棄却の不当判決を言い渡しました。遺族は上告しました。
 戦前、中国人の劉連仁さんは、日本政府によって強制連行され北海道の炭鉱で強制労働させられ脱走し、その後13年間逃亡生活を強いられました。一審は、国が救護義務を怠ったとして賠償を命じました。
 今回の判決では、強制連行・労働の事実と国の不法行為の責任は認めたものの、当時の中国には国賠法がなく「相互保証」の適用がない、また20年で賠償請求権が消える除斥期間が経過した、などとして請求を棄却しました。
 劉さんの遺族と弁護団、支援者は、国の不法行為は認められており、政府は戦争犯罪行為を認め、強制連行・労働させられた中国人労働者に対し、早急に謝罪と補償を行い全面解決を、と道義的・政治的責任を追及し、早期解決を求めています。
〈抗議先〉〒100―8933 千代田区霞が関1―1―4 東京高裁・西田美昭裁判長


国民保護法
福井で実動訓練
11月に全国初 救援会など県へ抗議

 政府は、国民保護法にもとづく初の実動訓練を11月末に福井県で行うことを発表しました。この訓練は、美浜原発へのテロ攻撃を「武力攻撃事態等」と認定し、自衛隊、警察、消防が役割を分担し、住民や指定公共機関もまきこみ行うとしています。
 これに対し、救援会も参加する有事法制反対福井県連絡会は6月27日、西川一誠県知事に対し、訓練は軍事訓練以外のなにものでもなく、平和憲法に反し許せないと抗議し、@訓練を返上すること、A関係市町および住民、医療・交通運輸など関係機関へ訓練を押し付けないこと、B戦争と戦争する国づくりに協力しない「平和宣言」を出すこと、C「県国民保護計画」を白紙に戻すこと、を求める申入れを行いました。また、7月8日には美浜町の山口治太郎町長に対し同趣旨の要請を行う予定です。

●警察庁・防衛庁
 共同実動訓練へ


 警察庁と防衛庁は、ゲリラ攻撃に対する治安出動を想定した陸上自衛隊と警察による実動訓練を今秋以降に順次、全国の都道府県で行うことを発表しました。報道(共同通信)によれば、これまでも陸上自衛隊と警察は図上訓練を行ってきましたが、今回、有事法制や国民保護法の整備により「環境が整った」(防衛庁幹部)として実動訓練を実施するとしています。
 平時から警察と軍隊である自衛隊との連携を実践的に強めようとする危険な動きです。


静岡・袴田事件
70人で現地を調査

 冤罪袴田事件第6回全国現地調査が7月2、3の両日、静岡市内で開かれ、8府県から70人が参加しました。1日目の事件学習と、2日目の事件現場での説明を受け、事件の真実を学びました。中川真弁護士と小川秀世弁護士が参加し報告。参加者から、活発な質問や意見が出されました。
 袴田事件は昨年8月東京高裁で即時抗告が棄却され、最高裁に特別抗告しています。支援する会では、最高裁での再審開始と袴田さんの「拘禁症状」を回復するために医療施設に移すことを要請しています。

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