【抗議声明】

憲法に保障された「裁判を受ける権利」、
被告人の防御権の否定に抗議する

 日本国民救援会は、1928年4月に権力による弾圧事件の犠牲者の救援を目的に結成され、来年創立80周年を迎える人権団体です。戦後は、松川事件・白鳥事件などをはじめ、数多くの弾圧・冤罪事件などを支援してきました。近年では、社会的にも問題となっている痴漢冤罪などの事件支援を行っています。
 貴裁判所で審理された町田痴漢冤罪事件についても、冤罪事件として裁判資料にもとづく検証、学習会、裁判傍聴などの支援活動を行ってきました。
ところが、11月14日、貴裁判官らは、この事件において、不当にも懲役1年6月の有罪判決を宣告したものですが、その量刑判断において、「被告人は、不合理な弁解を弄して犯行を否認し、被害者に慰謝の措置を何ら講じていないのはもとより、『被害者を証人として尋問する結果も招いている』」として、実刑の理由に被害者の証人尋問を挙げたことは断じて看過できません。
周知の通り、憲法37条は被告人の権利として「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられる」と定めています。被告人に不利益な供述をする証人に対する反対尋問は、被告人の防御権の行使として必要不可欠な手段であり、事実関係の正確な認定のためにも重要であることは論を待ちません。
この町田事件では、被害者の供述調書を弁護側が不同意としたところ、実際に被害者を証言台に立たせたのは検察側であり、それを被告人に転嫁するのは筋違いです。また、その尋問がビデオリンク方式で充分な被害者保護の下に行われたことを考えても著しくバランスを欠いた判断といわざるを得ません。
刑事被告人が憲法上の権利を行使したことを不利益に解釈され、実刑を科せられるなどということがまかり通れば、被告人は反対尋問権を放棄して検察側調書にすべて同意せざるを得なくなり、そのような裁判が「裁判」の名に値しないことは火を見るよりも明らかです。
以上のとおりで、貴裁判所が犯した、憲法に保障された「裁判を受ける権利」、被告人の防御権を否定する判決に厳しく抗議するものです。


  

2007年11月23日
 

東京高等裁判所第5刑事部
  裁判長裁判官  高橋 省吾  殿
     裁判官  服部  悟  殿
     裁判官  中島真一郎  殿

日本国民救援会第8回中央常任委員会